Fortranとは?できることをわかりやすく解説

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目次

1. Fortranの概要と特徴

Fortranとは、1957年にIBMが開発した世界初の高級プログラミング言語の一つで、科学技術計算をはじめとする数値計算を得意とする言語です。その名前は「Formula Translation(公式翻訳)」の略であり、数式を扱うことからもその名の由来が伺えます。

Fortranはエンジニアや科学者が多く使用するという特徴があり、現在でも科学技術計算の分野で広く活用されています。Fortranが多く使用される背景には、その効率性と信頼性が大きく影響しています。

一方で、Fortranは近年のWeb開発やアプリケーション開発で主流となっているPythonJavaなどとは異なり、比較的学習する機会が少ない言語でもあります。

1.1 Fortranの歴史と重要性

Fortranが開発されたのはコンピューターの黎明期であり、それ以前はアセンブリ言語やマシン語でプログラミングを行わなければならなかったため、Fortranは画期的な存在でした。

Fortranの開発以降、エンジニアや科学者はマシン依存のアセンブリ言語から解放され、より抽象的な表現でアルゴリズムを記述できるようになりました。この抽象化のパラダイムシフトは、現代の高級プログラミング言語が扱う多くのコンセプトを形成しました。

簡潔で効率的な表現が可能なFortranは、その後も多くの科学計算やエンジニアリング分野で重要な役割を果たしてきました。

1.2 Fortranの主な特徴

Fortranの特徴はその効率性と信頼性です。Fortranは数値計算に特化した言語であり、大規模な計算を快適に行うことができます。

効率性の面では、Fortranはコンパイル言語であり、実行速度が早いことが特徴です。これにより、大量のデータを扱う計算処理において時間短縮が可能となります。

信頼性については、Fortranは静的型付けを採用しているため、ランタイムエラーを起こしにくいという特性があります。これにより、科学計算やエンジニアリングなど、正確さが求められる分野で広く利用されています。

1.3 Fortranのバージョンについて

Fortranのバージョンは多岐に亘り、それぞれのバージョンで追加された機能や修正が行われています。最も初期のバージョンは「Fortran I」であり、現在では「Fortran 2008」や「Fortran 2018」など、さまざまな最新バージョンが存在します。

バージョンによる違いは主に機能追加や仕様の改善、既知の問題の修正などが含まれます。したがって、使用するFortranのバージョンによって、利用できる機能や書き方が変わる場合があります。

しかし一方で、Fortranの基本的な構文や考え方についてはバージョン間でも共通しているため、一度Fortranのプログラミングを理解すれば、それぞれのバージョン間での適応も容易になります。

1.4 Fortranの使用分野

Fortranは、その数値計算能力の高さから、科学技術計算の分野を中心に展開されてきました。特に、気象予報、気候モデリング、物理学、化学、エンジニアリングなど、大量のデータと計算が必要な分野で広く利用されています。

また、Fortranは並列計算における強力なサポートを提供しているため、スーパーコンピューターを用いた大規模なシミュレーション作成にも頻繁に利用されています。

Fortranはその性質上、データ分析や汎用アプリケーションの開発よりも専門的な分野で利用される傾向にあるため、特定の業界である程度の専門知識を持ったエンジニアや科学者にとっては、非常に有用なツールとなります。

2. Fortranでできること

Fortranは科学技術計算を専門に扱うプログラミング言語の一つであり、その機能や使い道は多岐にわたります。次の項目では、どのような事がFortranで可能なのかを具体的に紹介していきます。

2.1 数値計算とシミュレーション

Fortranはその出自から数値計算とシミュレーションが得意な分野となっています。僧算学、物理学、気候学など、科学技術の分野では繰り返しが多い大量の数値計算が頻繁に行われます。

また、そのような複雑な計算を行うためには効率よくアルゴリズムを設計する能力が求められ、Fortranはそのあたりのハンドリングが容易であることでも知られています。さらに、Fortranで開発されたソフトウェアでは、高速なアプリケーションを構築することが可能です。

そのため、天気予報のシミュレーションや航空機の飛行シミュレーション、量子力学の計算など、高度な計算が必要な分野でよく使われます。

2.2 ハードウェアとの直接的な通信

Fortranはハードウェアと直接に通信することも可能であり、これによりハードウェアを最大限に活用できます。これは特にスーパーコンピューターのような特殊な環境でのプログラミングに重要です。

さらに、Fortranではハードウェアに直接アクセスすることで、他のプログラミング言語では難しいレベルのパフォーマンスを出せます。これは、例えば高度な物理シミュレーションを行うような場合に非常に有効です。

したがって、Fortranを使いこなすことは、最大限のコンピューティングパフォーマンスを得るために重要となります。

2.3 パフォーマンスの最適化

Fortran言語はパフォーマンスの最適化に着目した設計がなされており、高速な記述が可能となっています。具体的には、配列や行列の操作が容易で、並列処理やベクトル化にも対応しています。

また、Fortranはコンパイル言語であるため、実行速度が速くなるというメリットがあります。加えて、最適化コンパイラの進化により、コードの効率化が可能となっています。

このような特性から、大規模な数値計算を高速に処理する必要がある科学技術系の研究や産業界で、Fortranは広く利用されています。

2.4 複雑なデータ解析

Fortranは複雑なデータ解析にも強く、さまざまな形式のデータを扱うことができます。具体的には、高次元配列や複雑な計算を必要とするデータ解析に適しています。

また、Fortranは高度な数値演算をサポートしているため、統計学やデータサイエンスの分野でも利用されています。このような特性により、オブジェクト指向的な設計も可能となっています。

さらに、Fortranは数値解析ライブラリが充実しており、それらを用いることでより高度なデータ解析を行うことも可能となります。

3. Fortranの基本的な構文

Fortranとは、一般的に科学計算や数値計算に使用されるプログラミング言語の一つです。その基本的な構文を紹介する前に、Fortranが誕生した経緯に少し触れてみましょう。Fortranは最初にIBMで開発され、その後多くのバージョンがリリースされ、現在も使用され続けています。

現在でも多くの研究者や技術者が使い続けている理由として、
計算スピードの速さやソースコードの可読性が挙げられます。そして、その特長を支えるのがFortranの基本的な構文です。

以下では、Fortranの基本的な構文、つまり変数の定義と型、制御構造、関数とサブルーチン、モジュールとプログラム構造について説明します。

3.1 変数の定義と型

Fortranでは、変数はINTEGERREALDOUBLE PRECISIONCOMPLEXLOGICALCHARACTER等の型を定義します。これらはそれぞれ、整数、実数、倍精度実数、複素数、論理値、文字列を扱うための型です。

変数の定義は、型の宣言と同時に行うことも、後から行うこともできます。例えば、INTEGER :: aとすることで、整数型の変数aを定義することができます。

また、一度定義した変数の型を変更することはできません。このような特徴は、プログラムの安全性を保つために重要な機能です。

3.2 制御構造

Fortranの制御構造には、一般的なプログラミング言語と同様に、条件分岐のIF文や繰り返しのDO文が存在します。

IF文は条件を満たすかどうかで処理を分岐します。DO文は指定した回数だけ、または条件を満たす間処理を繰り返します。

これらの制御構造により、Fortranでは複雑な処理を効率的に記述することができます。

3.3 関数とサブルーチン

Fortranでは、FUNCTIONキーワードを用いて関数を定義します。関数は入力を受け取り、何らかの計算や処理を行った後、一つの値を返します。

一方、SUBROUTINEを使用すれば、複数の値を返すことができます。また、SUBROUTINEは関数と異なり、値を返さない場合もあります。

これら関数とサブルーチンの使用により、プログラムの再利用性が向上し、コードの簡潔性や可読性が保たれます。

3.4 モジュールとプログラム構造

Fortranでは、複数のPROGRAMSUBROUTINEFUNCTIONなどから成る大規模なプログラムを効率良く管理するための手段として、MODULEという概念があります。

MODULEは、関連するサブルーチンや関数、変数などを一まとまりにして管理するためのものであり、PROGRAM内でUSEキーワードを用いて呼び出します。

MODULEを使用することで、プログラムの再利用性を高めるとともに、コードの整理が容易となり、大規模なプログラムの開発も無理なく進めることが可能です。

4. Fortranの学習メソッド

学ぶべきプログラミング言語は数多くありますが、計算科学やエンジニアリングの分野で長い間使われている言語がFortranです。その学習メソッドを探求することで、技術者としてのスキルを高めることができます。

4.1 言語構造の理解

Fortranの学習は、Fortranの言語構造を理解することから始めます。Fortranは、科学計算や数値計算を中心に使用される言語であるため、その構造はこのような背景を反映しています。従って、配列操作の理解や並行処理の理解が必要となります。

また、Fortranは老舗のプログラミング言語であるため、旧式の言語機能と新式の言語機能が混在していることも特徴的です。そのため、新旧の機能を理解して、適切に使用する能力が求められます。

さらに、Fortranは手続き型言語ですので、その理解も必要です。手続き型とは、問題を解決するための一連の手順(手続き)を記述する方式のことを言います。

4.2 コードの読み書き

言語構造の理解を深めた後は、具体的なコードの読み書きに移ります。Fortranのコードを読む際には、コードがどのような処理を意図しているのか、その文脈を理解することが重要です。また、me Fortranでは行の始まりと終わりが明確に定義されているので、そのルールにも注意が必要です。

次に、自分でコードを書くためには、良いコードとは何かを理解する必要があります。これには、効率的なアルゴリズムの設計、清潔で読みやすいコードの書き方、そしてテストの導入などが含まれます。

良いコードを書くためには、プログラミングパラダイムの理解も必要です。Fortranは基本的には手続き型ですが、90以降のバージョンからは一部オブジェクト指向も取り入れています。

4.3 実際のプロジェクトへの応用

実戦経験は学習の一部であり、実際のプロジェクトでFortranを使用することは理論を実践に移すための重要なステップです。これにより、理論的な知識を実際の問題解決に活用する能力を養います。

また、プロジェクトを通じてコードのリファクタリングやデバッグの経験を積むことも可能です。これは、より効率的なコードを作成するための重要なスキルです。

そして、実際のプロジェクトでの経験は、プログラミングスキルだけでなく、チームで働く能力やコミュニケーション能力も育てます。これらはテクニカルスキルだけでなくソフトスキルとしても重要な能力です。

4.4 効率的なデバッグ方法

デバッグは、Fortranを含む任意のプログラミング言語で重要なスキルです。Fortranコードのデバッグを効率的に行う方法を学ぶことで、生産性を向上させることができます。

デバッグには、インタラクティブデバッガを使用します。インタラクティブデバッガは、コードの実行を一時停止し、任意の場所でコードを実行し、変数の値を観察することができます。これを利用すれば、バグの原因を特定し、修正することがより簡単になります。

また、ユニットテストや統合テストもデバッグに有効な手段です。テストは、コードが予期した動作をするかを確認するためのものです。これにより、バグを早期に発見し、修正することが可能なります。

5. Fortranの将来性とトレンド

Fortranは1957年に登場した、科学技術計算を主とするプログラミング言語です。現在でもその役割は強固であり、特に数値計算や科学技術計算領域での利用が広く行われています。しかし、地位を占めてきたプログラミングの世界ではその利点が見過ごされることもあるのが現状です。

5.1 Fortranの現在の地位

Fortranは、現在でも高性能な数値計算を必要とする業界、特に気象予報や航空宇宙、物理学などで頻繁に用いられています。その高性能な計算能力と扱いやすさから、情報科学におけるパフォーマンスが求められる場面で選ばれ続けているのです。

しかし、一方で新たなプログラミング言語の登場により、その地位は揺らいでいます。特に若い世代のプログラマーにとっては、Fortranは古い言語であるという認識があり、新たなプロジェクトでの採用が敬遠される傾向にあります。

それでもなお、Fortranが一部の領域で重要な地位を保持し続けているのは、計算速度を追求しなければならない特定の研究や開発におけるその優れたスケーラビリティと性能のおかげです。

5.2 未来への発展可能性

その高い計算能力を持ちつつも老舗言語という立場のFortran、しかし、「古い=ダメ」と評価されるのではなく、その長い歴史から生じる安定性や堅牢性、そして最新のコンピューティング技術に対応した拡張性に着目する必要があります。

最新のFortran標準は2018年にリリースされたFortran 2018で、科学計算以外の領域での利用を視野に入れた改良も図られており、新たな可能性を秘めています。

また、既存のFortranプログラムのメンテナンスや運用、新規開発の需要も依然としてあり、未来への発展可能性は十分に秘めていると言えます。

5.3 行き交う意見:Fortranは死んだのか、それとも生きているのか?

「Fortranは死んだ」という意見と、「まだ必要性がある」という二つの意見が交錯しています。しかし、「死亡宣告」は極端かつ早計であると反論する声もあります。

古い言語だからといってその有用性がなくなったわけではなく、今もなおそのパフォーマンスと信頼性から特定の領域で愛され続け、使用され続けています。

結論としては、Fortranが必要とされる場面は依然として存在し、昨今の技術環境においてもその重要性を失っていないと言えるでしょう。

5.4 Fortranのコミュニティ

Fortranのコミュニティは活発で、その中には新しいFortran標準を開発する専門家やFortranコードを書くプログラマー、またそのユーザーなど、多様な人々が集まっています。

このコミュニティによって、Fortranは常に進化し続けており、それがFortranが古いと誤解される原因かもしれませんが、逆に考えればフレキシブルに進化し続けることが可能なプログラミング言語であるとも言えます。

その積極的なコミュニティ活動が、Fortranが未だに現役として活躍し続ける大きな要因となっています。

6. Fortranと他の言語との比較

このセクションでは、Fortranと他のプログラミング言語との違いについて触れます。それぞれの言語は独自の利点があり、特定のタスクの実行に最適化されています。そこで、C/C++、PythonJavaそしてMATLABと比較したFortranの特性について詳しく見ていきましょう。

6.1 FortranとC/C++の比較

FortranとC/C++は、どちらも科学計算とエンジニアリングのタスク向けに広く利用されていますが、異なる文法と特性を持ちます。Fortranでは、配列指向のプログラミングが強化されており、大規模な数値計算に適しています。

一方、C/C++はメモリ管理とオブジェクト指向プログラミングが強化されています。これにより、C/C++は高いパフォーマンスと精密な制御を可能にします。しかし、これらの特性は、コードの複雑性を増加させる可能性があります。

したがって、大規模な数値計算が必要な場合はFortran、メモリ管理とオブジェクト指向性が重要な場合はC/C++を選択すると良いでしょう。

6.2 FortranとPythonの比較

FortranとPythonは、それぞれ異なる用途とターゲットユーザーを持っています。Fortranは科学計算と数値計算を効率的に扱う能力があります。

一方、Pythonは柔軟性とユーザーフレンドリーな文法で人気があります。しかし、その性質からPythonはFortranと比較して実行速度が遅いという欠点があります。

したがって、処理効率が重視される重い科学計算や数値計算にはFortranが、プロトタイピングや小規模から中規模のタスクにはPythonが適しています。

6.3 FortranとJavaの比較

FortranとJavaも互いに異なる特性と強みを持っています。Fortranは再利用と拡張が容易なモジュラーな設計をサポートしています。

一方、Javaはプラットフォームの移植性に重視を置いて設計されています。Javaの”Write Once, Run Anywhere”の哲学により、Javaプログラムは色々なシステムで動くことが可能です。

したがって、パフォーマンスと精度が必要な科学計算ではFortranが、クロスプラットフォームでの動作が必要なアプリケーション開発ではJavaが適しています。

6.4 FortranとMATLABの比較

FortranとMATLABは、どちらも科学計算と工学分野で利用されますが、用途と機能には大きな違いがあります。Fortranは一般的なプログラミングに対して、MATLABは行列演算とアルゴリズムの開発に特化しています。

MATLABの強みの一つは、ビジュアル化機能と豊富なライブラリであり、これによりアルゴリズムのプロトタイピングやデータ分析が容易になります。

したがって、実行効率と大規模な数値計算が求められる場合はFortranが、アルゴリズムの開発やデータアナリシスが主な課題の場合にはMATLABが適しています。

参考文献

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